天井裏から聞こえる不審な物音の正体がイタチだと判明した際、一刻も早く駆除したいと焦る気持ちは当然ですが、その行動が意図せず法律違反となってしまうケースがあるため、細心の注意が必要です。日本では「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」、通称「鳥獣保護管理法」により、野生鳥獣の保護が定められており、イタチもその対象に含まれます。特に重要なのは、日本に古来から生息するニホンイタチのメスは、狩猟鳥獣から除外されており、年間を通じて許可なく捕獲・殺傷することが固く禁じられている点です。オスに関しては狩猟期間中であれば捕獲可能ですが、一般の住宅地で狩猟免許を持つ人が適切な方法で罠を仕掛けるという状況は非現実的です。また、近年増えている外来種のシベリアイタチ(チョウセンイタチ)はオス・メス共に狩猟鳥獣ですが、これも許可なく捕獲することはできません。外見からオスとメス、あるいは在来種と外来種を正確に識別することは極めて困難であり、万が一保護対象の個体を誤って捕獲・殺傷してしまえば、法律による罰則(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)の対象となるリスクを伴います。したがって、「家に侵入した害獣だから」という理由で、自己判断で罠を仕掛けたり、ましてや殺傷したりする行為は絶対に避けるべきです。
では、法律を遵守しながら安全にイタチを追い出すにはどうすれば良いのでしょうか。最も確実で推奨される方法は、お住まいの自治体の役所(多くは環境課や農林課などが窓口)に相談することです。担当者から正式な手続きや、地域で認可を受けている専門の駆除業者の紹介など、適切なアドバイスを得ることができます。家屋への被害が深刻であると判断されれば、「有害鳥獣」としての捕獲許可が下りる場合がありますが、その申請手続きや捕獲後の処理は非常に煩雑です。そのため、多くの場合は専門の駆除業者に依頼することが最善の策となります。専門業者は、法的な手続きの代行はもちろん、イタチの生態や習性を熟知しているため、捕獲に頼らずに追い出すノウハウを持っています。例えば、イタチが嫌う強い光を放つ機材や、嗅覚を刺激する特殊な忌避剤(くん煙剤など)を使用して、家屋から安全に追い出します。これらの方法はイタチを傷つけることなく、平和的に解決へと導きます。
追い出しに成功した後の作業が最も重要です。イタチは帰巣本能が強く、一度追い出しても侵入口が塞がれていなければ、すぐに戻ってきてしまいます。専門業者は、追い出し作業と並行して、侵入経路の特定と封鎖を徹底的に行います。屋根の隙間、通気口、壁のひび割れ、配管周りの穴など、イタチが利用しそうなわずかな隙間(直径3cm程度でも侵入可能)を、金網やパンチングメタルといった頑丈な資材で物理的に塞ぎます。こうした再発防止策を講じることこそが、根本的な解決に繋がります。法律を守り、動物を不必要に傷つけることなく問題を解決するためにも、まずは専門家へ相談するという冷静な判断が求められます。